行政書士の濱西「ねえ、ミカコちゃん、昨日の新聞って読んだ?」
アシスタントのミカコ「フッ、あたしは新聞読まない主義なので。」
濱西「そんな主義があるの?最近はネットで済ますって人も増えてるらしいからね。」
ミカコ「そう、あたしは、まさにそれです。で、昨日の新聞がどうしたんですか?」
濱西「あぁ、昨日の朝日新聞に、年末は家族で集まるから、相続の話をしてみたら?って話があったので、ミカコちゃんも読んだかなーと思って。」
ミカコ「そんな記事があったんですか。ていうか、なぜ今日になって昨日の新聞の話を?」
濱西「すみません、昨日話すの忘れてました。でも、今日発売の週刊誌にも、相続の特集が載ってて、世の中の人が少し関心を持ってきてるのかもね。」
ミカコ「先生、それはチャンスじゃないですか。期末手当が楽しみ。」
濱西「まだ、依頼もないのでなんとも。まあ、頑張ろうね。ところで、この前遺産分割の話をしたでしょ。」
ミカコ「あー、分割には、現物分割、代償分割、換価分割があるって話ですね。」
濱西「そう、それ。この前相談を受けたとき、代償分割後に、お金を払ってくれないって相談があってね。」
ミカコ「えーっと、代償分割は、一人の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを与える方法でしたよね?」
濱西「正解です。例えば、兄が土地と建物を相続する代わりに、妹には代償に相当額を払うということ。」
ミカコ「でも、その兄がお金を払ってくれないと。」
濱西「そういうこと。こんなことなら、この前の遺産分割を無効にして、もう一度やり直したいって相談だったんだけど。」
ミカコ「へぇー、そんなことできるんですか?」
濱西「残念ながら、できません。」
ミカコ「なんでですか?」
濱西「いろいろ理由があるんだけど、分割後に相続人が受け取った不動産を売ったりする場合があるでしょ。」
ミカコ「親から受け継いだ土地・建物を売るとは、なんて非道な(怒)」
濱西「いや、そこは、相続人の自由なわけで。売ったあとに、協議のやり直しって言われると、取引の安全性が損なわれちゃうでしょ。」
ミカコ「あー、確かに、買った人はドキドキしちゃいますね。」
濱西「そういった理由もあって、一度決まった遺産分割協議のやり直しは、原則できないとされています。」
ミカコ「じゃあ、例外的にできる場合もあると。」
濱西「錯誤や詐欺・強迫の場合ですね。それと、相続人全員の合意による解除も可能だとされています。」
ミカコ「なるほど、なかなか難しそうですね。じゃあ、払ってもらえない場合、泣き寝入りしかないんですか?」
濱西「訴訟を起こすか、調停を頼むことになりますね。」
ミカコ「おぉ、ドロドロしそうな匂いが漂ってますね。」
濱西「訴訟や調停の話になってくると、弁護士に依頼するしかなくなりますね。」
ミカコ「じゃあ、この相談を受けても、先生の出来ることってあまり無さそうですね。」
濱西「そうなんです。弁護士紹介するくらいかな。」
ミカコ「じゃあ、先生が出来る依頼が入るのを祈っときます。そして、あたしの期末手当が入ってくるのを心から祈っておきます。」