行政書士の濱西「クラウディオ・アバドさんが亡くなったね。」
アシスタントのミカコ「えっ、それ誰ですか?」
濱西「オーケストラの指揮者だよ。知らないの?」
ミカコ「指揮者は小沢征爾くらいしか知りません。」
濱西「そうなんだ。アバドさんっていうのはね、」
ミカコ「ストッープ。その話、絶対長くなるでしょ。先生クラシック好きですもんね。」
濱西「じゃあ、アバドさんを偲んで、今日の相続ブログは、生命保険について話します。」
ミカコ「なんか生々しいですね。」
濱西「直接は関係ないんだけど、前回特別受益の話をしたので、その続きです。今日は掲示板で見かけた質問に、自分なりに答えてみようかと思います。」
ミカコ「掲示板の質問って、見てると面白いですよね。ああいう時の答えって、間違った答えを言ってる時もありますよね。」
濱西「そうなんですよ。だから掲示板の答えを真に受けない方がいいですよ。で、今回の質問ですが長いので下にまとめます。」
~私の夫が先日亡くなりました。
私は夫の後妻で、子供はありません。夫には、離婚した前の奥さんとの子供がひとりいます。
夫は受取人を私にして、生命保険に入っており、先日私は保険金を受け取りました。
この前の日曜日に、二人で遺産分割協議をしたのですが、先妻の子に、保険金も遺産に入れるべきだと言われました。
保険金も遺産に入れないといけないのでしょうか?~
ミカコ「先妻の子と後妻ですか。ドロドロしそうですね。」
濱西「こういう場合は、遺言を書いておくほうが無難だと思うけど、もう遅いよね。原則として、保険金は遺産分割の対象にはなりません。」
ミカコ「へぇー、そうなんですね。」
濱西「今回の質問者が受取人となって受け取った保険金は、亡くなった方と保険会社との保険契約によるもので、相続とは関係なく取得したと考えられます。」
ミカコ「なんとなくしか分かりませんが、保険金は相続財産にならないってことでいいんですね。」
濱西「あくまでも、原則としてです。保険契約を見てみないと分からないですね。」
ミカコ「保険金が相続財産に入らないのなら、先生が最初に言ってた特別受益も関係なくなるんじゃないですか?」
濱西「そうとは言い切れないんです。」
ミカコ「じゃあ、保険金を受け取った人は、相続額から引かれちゃうってことですか?」
濱西「そういう場合もあります。」
ミカコ「今日は歯切れの悪い答えが多いですね。」
濱西「絶対こうだと言い切れないのが、相続の話の辛いとこですね。いつもケースバイケースだと思ってくれてたほうがいいです。」
ミカコ「だから専門家に相談しろと。」
濱西「そういうことになりますね。で、特別受益とみられるかどうかなのですが、原則は特別受益として扱われません。」
ミカコ「いつもの原則と例外ですね。」
濱西「保険金を受け取った人と、その他相続人との間に特段の事情がない限り特別受益とはならない、というのが最高裁の判例です。」
ミカコ「特段の事情ってどんな事情ですか?」
濱西「 このときばかりは仕方がないという特別な事情です。 特段の事情の有無については、保険金の額。保険金の遺産総額に対する比率。受取人と相続人と亡くなった方との関係。各相続人の生活実態などを総合的に考慮して判断するようです。」
ミカコ「・・・。寝てしまいそう。」
濱西「そして特段の事情の判断には、保険金の額と遺産全体に対する割合が重要な判断材料になります。」
ミカコ「なんとなくでしか分からないんですが、ケースバイケースだということですね。」
濱西「保険金は、相続財産に組み込む必要はないが、特別受益の対象となる可能性はあると覚えておいてください。」